指輪。
 
 
 
■ 夕方の地下鉄で、隣に座ったOLが本を読んでいた。
 熱心に読みふけっている。
 カバーがかかり、文庫ではなく、細かな字面が並んでいる。
 横顔は、昔知っていた女性に似ていた。
 二十五くらいだろうか。
 眺めると、本の余白に、その章の題目が書いてあった。
「バランスを保つには」
 すると、左の薬指に小さなダイヤの指輪があった。